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ゆるやかで長い坂を抜ける。

思い出の場所が見えてきた。

そこには色褪せない思い出がたくさんある。

辛いことも、哀しい事も、嬉しい事も、楽しい事も全部詰まっていた。

二度と戻れないあの日々は純粋に懐かしく、愛おしい。

私がここに来た理由は思い出だけを感じに来ただけじゃない。

決意が欲しかった。

なんの?って聞かれると正直心苦しいが……。

……言わなきゃいけないのか!?

ううっ、実は……朋也のプレゼントが決まらないんだっ。






朋也くんのハプニングと智代さんはプレゼント







 休みの日、古河パンで昼飯を買おうと思い店に一人でやってきた俺。

 智代は朝方、用事があると言って家を出ていった。

 なんでも、大事な用だとか……。

 まさか、智代に限って浮気とか……ある訳……ないよな?

 智代は可愛いしさ性格もいいし……。

 俺には勿体ない嫁だよ、うん。

 街に行くと男たちの視線を浴びるほどなんだぜ?

 もちろん、智代に手を出す輩にはスパナとお手製ホウ酸団子をお見舞いするけどな。

 もし、智代が自分から男に行ってしまったら……。

「ノォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 か、考えるだけで灰になりそうだ……。

 まぁ、そんな心配はいらないなっ。

 なんてたって、昨日愛を再確認したもんね!

 つい、智代に満腹か!?満腹なのか!?って言ったら蹴られました。

「おい、小僧そろそろ突っ込んでいいか?」

 オッサンがバットを持ち眉間をヒクヒクさせながら俺に言う。

「……あぁ、悪い」

 俺は当然、謝った。

 ちなみに早苗さんと古河は買い物でいないらしい。

 いなくてよかった……。

 店に入りオッサンは店番をやり、俺はパンをトレイに載せる。

 こんなもんかとトレイに載せたものを見て思う。

「ヒーハー、やっちまったぜぇ!」

 いきなり、オッサンが叫ぶ。

「いきなり奇声を上げるなよ」

 どこぞのオカマ王国の女王か。

「週刊少年誌読んでたからつい」

 オッサンは言って手に持っていた雑誌を見せる。

 表紙がさっきオッサンが使ったネタのものだった。

 相変わらずスゲェ人気だな。

「で、何をやらかしたんだ?」

「いや、ゾリオン大会があるってことを忘れててな……」

 また、ゾリオンか……。

「飽きねぇな」

 溜め息をつく。

「本当に楽しいものは飽きないように工夫するってもんよ」

「その工夫は他の事に使えよ……」

 特にパンのことに。

「んで、今回はコンビで出る事になってんだ」

 こいつ、見事にスルーしやがった。

 まぁ、いつもの事だからあまり気にはしないが。

「ふ〜ん」

 興味がないので素っ気ない返事を返す。

「おい、お前にも関係あるんだぞ?」

「は?」

 思わず疑問で返した俺。

 俺にも関係がある?

 なんで?

 なぜに?

 WHAT?

「だから、お前も出るんだよ」

 ……は?

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」

 外にも聞こえるような声で叫んでしまう。

「そんなに驚くこたぁねぇだろ」

「驚くわっ!何勝手に俺も参加させてるんだよ!!」

「お前んとこの嫁さんのともぴょんにちゃんと許可はもらってるから心配すんなって」

「いつ、そんな約束を!?」

 ……智代の事だ俺に伝えるの忘れてたんだな。

 そうさ、きっとそうさ。

 全く、智代はいつまで経っても可愛いなぁ〜。

「……まぁ、『借りる』としか言ってないけどな」

「こんの、どあほしゃらぁぁぁぁぁぁ!!」

 砂時計の形をしたものに核をぶち込もうとするとある組織の盟主みたいに俺は怒り狂う。

「ちょ、ちょっと待て怒るなって話を聞きやがれっ」

「俺の休日をォォォォ!数少ない休日をォォォォォ!」

「おち、落ちつけって!」

 オッサンの肩を掴んでブンブンと押したり引いたりする。

「落ち着いていられるかっ!智代とラブラブな一日を過ごそうと思ってたのにぃぃぃぃ!!」

「お前にも見返りを用意してあるからそんなに怒るな!」

「……見返り?」

 その言葉に俺は反応する。

 オッサンの見返りは中々いいものがある。

 聞いておいて損は無い。

 だから、矛を収めた。

「おぅ、俺がタダでこんな話をすると思うか?」

「あえて言おう、思っていると!!」

 By,ザ〇家の長男から。

 ジーク、ジ〇ン。

「……信用ないのな」

「前科があるからな」

 前回もこんな感じで酷い目にあった。

「まぁいい、今回のゾリオンで優勝すればこれが手に入るんだ」

 オッサンは言ってメモ帳を見せる。

 俺はそれを覗きこんだ。

「どれどれ」

 こ、これはっ!!

「温泉旅行一泊二日の旅にご招待だとぅ!?」

 なんてこった浴衣姿の俺のマイハニーを生で見れるというのかぁ!

 風呂上がりで火照って少し赤いうなじ、はたける胸元!!

 そして、智代のはにかむ微笑み……。

 ……いい!

 Berry,Good!!

 うぉくぁずぁきぃすぅあいくぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

「……お〜い、小僧?」

「はっ!!危ない所だった」

「既にイッちまってたぞ?」

 はは、俺に限ってそんなことあるわけないだろ?

 どごぞのヒトデ大好き少女じゃあるまいし。

「……まぁ、裏特典もあるらしいからな」

「裏特典?なんだそれ?」

 メモ帳にはそんな事書いてなかった。

「俺にもわからん、だがカップル限定だそうだ」

「なるほど……」

 珍しい事もあるもんだと両方の意味で納得する俺。

 その意味はオッサンでも商店街絡みで知らない事があるんだなと。

「勝って裏特典と優勝賞品をゲットしようぜ!」

 オッサンは右手を差し出す。

「ああ、俺たちは……今から同志だ!!」

 ここに嫁と四六時中ちょめちょめし隊が結成された!

 そして、戦場へ!!





「と終われば聞こえがよかったな……」

「今更泣き言をほざくんじゃねぇ!」

 オッサンが渇を入れる。

 だが、オッサンも冷や汗が垂れている。

 わかっている。

 こんな事は俺だって予想外だ。

 しかし、なんだってこんな状況なんだ!?

 訳がわからない。

 何故、何故……。

「こんな、樹海でやらなきゃいけないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 我が国日本が認める世界遺産の山の近くの森。

 森を通り越して人はそれを樹海と呼ぶ。

 今回のゾリオン大会は超本格的だと聞いていたが誰もこんな事は予想するまい。

「馬鹿っ、大きい声を出すなって敵に位置がばれる!」

 オッサンはこの状況にも慣れてきたようで戦闘モードに入っている。

「順応性を高めろ、そしてあるがままを受け止めるのがコツさ」

「いや、誰もそんな事聞いてないし……」

 死んだ世界で戦う訳でもなかろうが。

「まっ、哀しいけどこれが戦争なのよねぇ……」

「だから、誰もそんな事聞いてないし」

 無茶して死んだじゃんその人……。

 と言うか、戦争だったのかこれ……。

「戦うしかなかろう、互いに敵である限り、どちらかが滅びるまでなぁ!!」

「もう、何も言うまい……」

 いつまで、このノリを続けるんだろう……?

 と思った矢先、耳の側を何かが通り過ぎた。

「ちっ、見つかちまったか!」

 オッサンは銃を構え木の後ろに回り臨戦態勢を取る。

「あんだけ騒げば近くにいる奴は気付くだろうが!」

 俺も同じようにして臨戦態勢を取った。

 撃たれた方向を見る。

 敵が何人いるのかわからない。 

「オッサン、位置わかるか?」

 なんだかんだでゾリオンにも慣れて来たものだ。

 ……いやな慣れだ。

「生憎、わからんな」

 オッサンは苦虫を潰したような顔で答える。

「ただ、敵だけはわかるな」

「……どんな、相手だ?」

 商店街メンバーは強力な敵が多い。

 とオッサンの弁。

「スナイパー盛岡だ、奴の背後に立つなと言われるほど周囲の気配が読める人間だ」

「それ、ネタなのか?ネタだと言ってくれ」

「……めんどくさい奴に狙われたもんだ」

 ネタなんだな……。

「そいつのパートナーは?」

「ネルソン秋山だ」

「なんか、メジャーリーグにいそうだなネルソンだけは」

 レッ○ソックス辺りに。

「正直、ネルソンは訳がわからん」

「と言うと?」

「仲間内じゃ、奇抜奇妙な男と呼ばれている」

 褒めているのかけなしているのかわからないな。

「まぁ、俺の敵ではないけどな」

「自信満々だなオッサン」

 どこからそんな自信が湧いてくるのだろうな。

「古河さんッ!覚悟ぉぉぉ!!」

 いきなり、男が出て来て銃を向けて放とうとする。

「甘いわっ!」

 オッサンの方が素早く銃を構え撃った。

 見事に男のブザーに直撃する。

「さすがネルソン、奇襲とはお前らしいな」

「古河さんには通用しなかったか……」

 ネルソンと呼ばれた男は倒れた。

 ネルソンが弱いのかオッサンが強いのかよくわからなかった。

「このプレッシャーは盛岡!そこかぁ!!」

 オッサンがニュータ〇プみたいに叫びながら撃つ。

 また、ブザーが鳴り男が出て来た。

「俺の位置をわかっていたのか……」

「独特の視線はわかりやすいからな」

 オッサンがデタラメなんだ。

 決してネルソンが弱い訳じゃない。

 そんな確信を持てた。

「気をつけな、ここはけものの姫が出てくるそうだ」

「けものの姫?」

 盛岡はそう言って倒れる。

 光線銃なんだから大げさにしなくても……。

「盛岡、お前の死は忘れない」

「だから、死んでないって」

 突っ込む俺。

 その瞬間、悲鳴が上がる。

『う、うあぁぁぁぁぁ琥魔の着ぐるみがぁぁぁぁぁ』

 漢字が違うからな……。

「あの声はジャッカル桑田!?」

「誰だよ!?」

「くそぅ、ジャッカル桑田までもか……」

 答える気ねぇなこのオッサン。

「行くぞ小僧!敵は近い!!」

「おい、オッサン!!」

 オッサンの背中を追いかける。

「てめぇかけものの姫は?」

「熊の着ぐるみって……」

 オッサンは熊の着ぐるみを睨みつけながら言う。

 見た目はまんま熊の着ぐるみで頭に花のカチューシャをつけている。

 ……まぁ、アイツしかいないわな。

「仲間たちの敵取らせてもらう!!」

 銃を構えるオッサン。

「だから、光線銃だってそれ」

「へ?」

 オッサンは間抜けな声を出す。

 熊は動き出し左足を前に出して走り出して勢いに乗った右足をオッサンの腹に蹴りこもうとする。

「ちぃ!!」

 オッサンは素早く反応して両腕を交差しながら腹をガードする。

 しかし、熊はその反応に反応して右足を引っ込める。

「なにぃ!?」

 オッサンもそれは予想外だったのか反応が遅れる。

 ガードの空いた顔面に左足を撃ちこんだ!!

「へぶっ!!」

 オッサンらしからぬ声を出し倒れこむ。

「つ、つえぇ……」

 そして、オッサンは気を失った。

「智代、どうしてこの場所に居るんだ?」

「無断で樹海に入り込み、あまつさえサバゲーをしている馬鹿共を駆逐しにきた…クマー」

 最後の方は恥ずかしかったのか少し声が高かった。

 …か、可愛いじゃねぇか。

 この野郎!

「私は智代じゃないクマ87星雲出身のクマトラマンなのだ…クマー」

「……誰の入れ知恵だ?」

「ヘタレン星人…クマー」

 ヘタレかあの野郎!

 …まぁ、語尾が可愛い智代が見れたからよしとしよう。

「その智代から依頼があった…クマー」

「へぇ〜、どんな?」

「朋也の誕生日のプレゼントが決まったと伝えてくれって…クマー」

 ……あぁ〜、今日俺の誕生日かぁ〜。

 どんなプレゼントを用意してるんだろうな?

「今から渡すから受け止めてほしい…クマー」

 語尾が一気に低くなったと同時に周りの気温が低くなったような気がする。

「全力64HITコンボをお見ま…プレゼントするクマー」

「言いなおすなよ!って怖い!熊の着ぐるみの目が怖いから!!」

 純粋な熊の着ぐるみの瞳は憤怒へと変わっていた。

「二日三日は歩けない程度にするぐらいだ…クマー」

 それって全然安心できないじゃん!!

「って、ノオォォォォォォォォォォ!!」

 俺の意識は14HITコンボ辺りで消えた。








































 これからの教訓、もう二度とゾリオンはしない!


 

 

 

 

 

 

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